失踪宣告の具体的手続き

前回、行方不明の相続人では詳しく書かなかったので、失踪宣告の手続き(普通失踪)について、

裁判所HPの失踪宣告を引用しながら、補足説明をしていきたいと思います。

1.概要

不在者(従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者)につき,その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪),又は戦争,船舶の沈没,震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)は,家庭裁判所は,申立てにより,失踪宣告をすることができます。
失踪宣告とは,生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

「その生死が7年間明らかでないとき」とは、最初に行方不明になった日を基準にするのではない事に注意して下さい。

どういう事かというと、行方不明となり3年程経過した頃に、親戚や友人を訪ねてきた等の事実があった場合や、街で見かけたけど、声をかけたら逃げられてしまった等の事実があった場合は、その時に「生死が明らか」ですから、最後の日を基準に「7年間」となります。

申立書の生死不明となった年月日は、この最後の日を記載して下さい。

 

時々誤解されている方がいらっしゃいますが、7年経過していないと申立は出来ません。

先に申立をし、7年が経過した時に失踪宣告がなされるのではありませんし、行方不明から何十年経っていても、申立は出来ます。

 

死亡したとみなされる時期にもご注意下さい。

例えば30歳で行方不明となったが、それから50年後に申立をした場合、生きていれば80歳ですが、失踪宣告がなされると、37歳で死亡した事になります。

 

この制度の目的は、利害関係人のため不在者を死亡したものとして取り扱って法律関係を確定させる為です。

人探しが目的ではありません。

また、離婚する為の制度は別にあるので、離婚したいという理由での失踪宣告は認められにくいと思います。

再婚したい場合まず「離婚」と考えるでしょうが、失踪宣告の条件が整っていれば、失踪宣告により「死亡」とみなされ、配偶者死亡により「婚姻は解消」されます。

再婚が可能となる他、相続も発生しますので、どの制度を利用するか、または利用できるのか検討が必要です。

 

また、不在者の財産管理人選任という制度もありますが、目的は全く別ですので、失踪宣告をする前に、不在者財産管理人を選任しておかなければならない、という事ではありません。

2.申立人

利害関係人(不在者の配偶者,相続人にあたる者,財産管理人,受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者)

ほかにも、不在者の親権者、不在者を被保険者とする生命保険金の受取人、不在者の死亡によって消滅する債務を負担する者(終身定期金債務者、年金債務者)も利害関係人にあたります。

しかし、不在者の債権者・債務者、取引の相手方、不動産の賃貸人などは含まれません。

なぜなら、不在者財産管理人選任の制度を利用する事で、問題は解消できるため「死亡とみなす」必要はないからです。

申立人の適格性なしと判断された場合、申立が不許可となります。

3.申立先

不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所
管轄裁判所を調べたい方はこちら

従来の住所地が不明の場合(外国での行方不明含む)は、東京家庭裁判所が申立先となります。

※居所とは、住居のない者がいつも居る所です。

4.申立てに必要な費用

収入印紙800円分

連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。なお,各裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあります。)

官報公告料4298円(失踪に関する届出の催告2725円及び失踪宣告1573円の合計額。裁判所の指示があってから納めてください。)

収入印紙800円分

不在者1人につき、手数料800円です。

800円の収入印紙はありませんので、「400円×2枚」を申立書に貼ります。

(合計800円になればOKです。)割印はしません。

連絡用の郵便切手

各家庭裁判所により金額が違い、内訳も決まっている為メモの用意をして電話します。

決まりはありませんが、切手は半透明のビニール(郵便局でくれた物)に入れ、ホチキス止め(1~2ヵ所)した上で、申立書にクリップ止めします。

  • 横浜家庭裁判所(H30.2月時点)…2,582円分
  • 東京家庭裁判所(H30.3月時点)…3,300円分
切手の種類 横浜家裁 東京家裁
500円 2枚 2枚
100円 *** 5枚
82円 15枚 20枚
50円 1枚 2枚
20円 10枚 ***
10円 10枚 5枚
2円 1枚 5枚

 

官報公告料

裁判所が失踪宣告相当との判断に至った場合、公告手続きをする為に、裁判所から予納するよう指示があります。

不在者の生存または死亡が判明すると、失踪宣告相当との判断にならず、その時点で却下の審判が出される事もあります。

この場合、当然に官報公告は不要なので、指示はありません。

 

失踪に関する届出の催告(公示催告)とは、

家事事件手続法 第百四十八条 

3 家庭裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号及び第四号の期間が経過しなければ、失踪の宣告の審判をすることができない。この場合において、第二号及び第四号の期間は、民法第三十条第一項の場合にあっては三月を、同条第二項の場合にあっては一月を下ってはならない。
一 不在者について失踪の宣告の申立てがあったこと。
二 不在者は、一定の期間までにその生存の届出をすべきこと。
三 前号の届出がないときは、失踪の宣告がされること。
四 不在者の生死を知る者は、一定の期間までにその届出をすべきこと。

このような内容をイメージして下さい。

  1. ●田●郎について、失踪宣告の申立がありました。
  2. ●田●郎は、生きているなら〇月〇日までに届出て下さい。
  3. 〇月〇日までに届出がなければ失踪宣告がされます。
  4. ●田●郎の生死を知っている者は、〇月〇日までに届出て下さい。

この公告を、3ヵ月以上裁判所の掲示場その他裁判所内の公衆の見やすい場所への掲示します。

官報への掲載もしますので、官報公告料として2,725円かかります。

 

その後、所定の手続きが進み、失踪宣告の審判がなされ確定すると、

失踪宣告を官報に掲載しますので、官報公告料として1,573円かかります。

5.申立てに必要な書類

(1) 申立書(6の書式及び記載例をご利用ください。)

(2) 標準的な申立添付書類

  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 失踪を証する資料
  • 申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))

※ 同じ書類は1通で足ります。

※ もし,申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は,その戸籍等は,申立後に追加提出することでも差し支えありません。

※ 審理のために必要な場合は,追加書類の提出をお願いすることがあります。

(1) 申立書

記載例を参考に記入の上押印(認印)し、1部(A4×2枚)提出します。

念の為ご自身の控えもコピーしておきましょう。

生死不明の年月日は、可能な限り「日」まで、特定して下さい。

特定する事で手続きもスムーズとなるようです。

生死不明となった場所ですが、家出なら「住所」、雪山遭難なら「〇〇岳」等です。

 

普通郵便での郵送も可能ですが、申立書受理の連絡自体は特にありませんのでご注意下さい。

なお、申立人住所記載のハガキ等を同封すると、事件番号等を記載し返送してくれるようです。


事件番号とは、平成〇〇年(家)〇〇〇号

(家)←家事審判事件のこと

(2) 標準的な申立添付書類

  1. 不在者の戸籍謄本 ※発行から3ヵ月以内
  2. 不在者の戸籍附票 ※発行から3ヵ月以内
  3. 失踪を証する資料 例)行方不明者届(旧捜索願)受理証明書(発行されない場合は受理NO.を聞いてみると教えてくれる事もある)行方不明者届は、失踪宣告の要件ではありませんが、保管期限超過等で証明書が発行されない場合には、その旨を申立書に記載しておくとよいでしょう。返戻された不在者宛の手紙等、住所が職権消除された記載の住民票(附票に記載あれば2の附票でよい)、置手紙、新聞の切抜き等
  4. 申立人の利害関係を証する資料 例)戸籍謄本(1と重複する場合は1の戸籍でよいが、1の戸籍で不在者と申立人の関係性が明確でない時は、他の戸籍謄本も添付必要)

※申立書類ではありませんが、失踪宣告がされる前に、最新の戸籍謄本・戸籍附票を提出します。

 

追加書類の提出は、家裁の担当者から電話等で指示があります。

この時、事件番号を口頭で言われた場合は、メモを残しておくとよいです。

追加書類提出時に事件番号を封筒等に付記してもよいですし、今後の問合せの際にも、事件番号を伝えるとスムーズです。

 

不在者が成人の場合は、出生から連続した戸籍を提出するよう言われると思います。

戸籍等は原本を提出しますが、基本的に原本還付はされませんので、入手困難な事情等がある場合は、ダメ元で個別に申し出てみて下さい。

6.手続きの流れ

申立~審判

必要書類が整うと、裁判所は管轄運転免許センター・警察本部・公共職業安定所等に対し、不在者の情報が登録されていないか調査嘱託を行います。

それでも不在者の生存が明らかとならない場合は、申立人や親族等に対し、調査官による調査等が行われる事が一般的です。

 

その上で、裁判所が失踪宣告相当との判断に至った場合には、公告手続きをします。

公告期間(3ヵ月)満了の前後に、申立人に対し、不在者に関する新たな情報や、申立の意思に変わりはないか等の確認を行います。

申立を継続する場合は、最新の戸籍謄本・戸籍附票を提出させ、不在者に変動がない事を確認の上、審判します。

審判後~失踪届

審判書謄本が、申立人へ送達されます。

送達後、即時抗告がないまま2週間経過する事で、審判が確定します。

確定すると、裁判所書記官は失踪宣告を官報に掲載すると同時に、不在者の本籍地役所へ通知します。

しかし、通知だけで戸籍には反映されませんので、申立人が「失踪届」を提出する必要があります。

 

失踪届は、確定日から10日以内に失踪者の本籍地の役所へ提出します。

提出に際し必要な書類は、下記のとおりです。

  • 失踪届(全国共通の様式です)
  • 審判書謄本
  • 確定証明書
  • 不在者の戸籍謄本(本籍地以外の役所のみ)

提出は、役所によって郵送できますが、事情を伺うため申立人に対して電話をする場合があります。

なお、確定証明書は、確定後に発行される物ですが、その申請自体は事前に可能です。

申請書に記入の上、収入印紙150円及び返信用郵便切手を同封の上、送付しておけば、確定後に確定証明書を送付してくれます。


失踪届を提出したら、その後の手続きの為、死亡とみなされた記載のある戸籍謄本を取得します。

以上が失踪宣告の手続きとなります。

司法書士は、家庭裁判所の代理権がないため書類作成のみとなりますが、必要に応じて、家庭裁判所への同行等、依頼人の不安が少しでも解消されるよう可能な限りの努力をしております。

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