遺言のススメ【子のない高齢者夫婦】

子供のいない高齢者夫婦の場合

夫(三郎)妻(信子)共に80代。子供はなく、年金暮らし。

夫が入院先の病院にて死亡。

遺言書はなく、夫の両親、さらに夫の兄2人もすでに他界していた。

2人の兄には、それぞれ子供がいるので、この子供たちが妻(信子)とともに相続人(代襲相続)となる。

1番上の兄(一郎)の子供は、武と美代子というが、遠くに暮らしている為あまり面識がない。

2番目の兄(次郎)の子供は、幸次郎といい、次郎は、幸次郎が小学生の時に亡くなったので、子供のいない三郎夫婦は近所に住む幸次郎を実の子のように可愛がっていた。

一時期は養子縁組も考えたが、幸次郎の母(次郎の妻)の反対もありその話は流れたままである。2年前、幸次郎の母も亡くなり、1人になった幸次郎は、病院の送り迎え等、何かと三郎夫婦の事を気にかけてくれ、頼りになる存在であった。

遺言書がないと、具体的にどんな不都合があるのでしょう?

子供のいない高齢者夫婦の相続は、より複雑になります。年齢的に夫の両親が他界していることは珍しくありません(直系尊属がいない)ので、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。

しかし、今回の事例のように、兄弟姉妹もすでに他界していると、その子供(被相続人からみて甥・姪)が代襲相続人となります。

相続人と持分は、妻(信子12/16)兄一郎の子(武1/16・美代子1/16)兄次郎の子(幸次郎2/16)となります。

※法定相続人の範囲と持分は、こちらの記事をご確認下さい。

住んでいるところが離れていたりすると、もう何十年も会っていないという事もありますので、遺された妻は、預貯金の解約や土地建物の名義変更のために、まずは相続人を探し出し、連絡を取る所から必要となってきます。今回の事例では、3人兄弟の設定にしましたが、この世代は兄弟姉妹が多いので、その人数によって更に相続人の調査が大変になります。

やっと調査がおわり、いよいよ遺産分割協議ですが、武が「権利がある分はきちんともらう」と言ってきたらどうですか?

突然飛び込んできた遺産に目がくらみ…なんてこともありますし、たまたま、経営している会社の資金繰りが上手くいっていない所に、遺産の話がやってきたとしたら…普段とは違う行動を取ってしまう事も十分考えられます。人はその時の状況次第で変わりますので、よく知っている間柄だから…と安易に考えてはいけません。トラブルを未然に防ぐとは、この為なんです。

三郎の遺産が、土地建物が3000万円・預貯金が1000万円あったとしましょう。武の持分は1/16なので、250万円です。

払えないこともないですが、武にだけ払うと、美代子や幸次郎とのバランスがうまく調整できません。

まして、幸次郎の事を考えると本当に頭が痛いですね。

遺言書があったとしたら、どう違うのでしょうか?

ほとんどは、子のない若夫婦の記事で書いたとおりです。

違う所は…自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を作成する事をお勧めします。

高齢になってから作成した場合、自筆証書遺言ですと、相続人の中で不利益を被る人等が、”無理やり書かせたんじゃないか?”  “認知症だったはずだ”  “字が違う、印鑑が違う”等、遺言書の成立を争ってくる危険性がありますので、そういったトラブルも未然に防ぐためには、公正証書遺言がベストでしょう。

なお、兄弟姉妹には遺留分減殺請求する権利はありませんので、何も問題ありません。

どういう遺言書を準備すればよかったのか?

「妻に全ての財産を相続させる」でもいいと思いますが、共に80代ですし、今回の事例では、幸次郎と三郎夫婦は、親子のような関係性があるため、遺された配偶者の面倒を見てもらうという条件付きで、「幸次郎に全財産を相続させる」「妻と幸次郎に全財産を1/2ずつ相続させる」という内容でもよいのかな、と思ったりします。

あとは、養子縁組を一度は考えていたので、幸次郎の母が亡くなった後に、改めて養子縁組を検討してもよいのかな、と思います。

養子縁組をする事で、三郎夫妻は、「子供のいない高齢者夫婦」ではなくなりますからね。

相続って、本当に色々なパターンがあります。高齢者って何歳からなの?という疑問もありますが、意識のしっかりしている内にご自身の遺言について考えてみてはいかがでしょうか。

相続登記なら司法書士坂上美穂事務所にお任せ下さい。

司法書士坂上美穂事務所は、相続・遺言専門の司法書士事務所です。
個人事務所だから出来る柔軟な対応と、女性司法書士ならではのきめ細やかなサービスの提供をお約束いたします。

ぜひお気軽にお問い合わせください。