遺言のススメ【子のない若夫婦】
子供のいない若い夫婦の場合
夫(浩二)妻(礼子)共に30代。子供はなく、共働き。
新居を購入して1年程経ったある日、夫が急死。
遺言書はなく、夫の両親(五郎と文子)は健在。
この場合、相続人は妻(礼子)と夫の両親です。持分は、妻(礼子4/6)夫の父(五郎1/6)夫の母(文子1/6)となります。
※法定相続人の範囲と持分は、こちらの記事をご確認下さい。
遺言書がないと、具体的にどんな不都合があるのでしょう?
相続が発生すると、夫の財産(預貯金・土地建物等)が相続人全員の共有となるため、たとえ葬儀費用の支払いであっても、妻一人では預貯金を引き出す事が出来なくなります。
住んでいる家も、夫の両親と共有となります。この場合、「妻が全ての財産を相続する」という内容の遺産分割協議が整えば、不動産の名義変更も妻にする事ができますし、金融機関等の手続きも必要書類を揃えていけば妻が解約手続き等する事が出来るようになります。
しかし、遺された妻から夫の両親に遺産分割協議をしたい旨を話さなければなりませんし、たとえ関係性が良好であったとしても、金銭が絡む話は中々言い出しにくいものです。
遺言書があったとしたら、どう違うのでしょうか?
「妻に全財産を相続させる」という内容の遺言書があった場合、遺言書が優先されるので、相続人は妻だけとなり、預貯金の引き出しや不動産の名義変更等の手続きも簡単になります。
(遺留分減殺請求については別の機会にします。)
自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の遺言検認手続きというものが必要になりますが、公的な手続きなので、夫の両親と遺産分割協議の話をしなければならない事と比較すれば、妻の精神的負担は軽いと思います。(自筆証書遺言の場合、公正証書遺言に比べ手続きが面倒になりますが、今回は精神的負担に着目しましょう。)
相続税の改正があったり、相続トラブル等、何かと「相続問題」をTVの情報番組で取り上げる機会が多くなったからか、ここ数年、遺言書の作成をする方が増加しています。しかし、30代40代で準備されている方はあまり多くはいらっしゃらないので、お若い内は、自筆証書遺言で十分ですから、ネット・書籍等で調べながら、定められた用法に従い、有効な遺言書となるよう注意して書いてみてはいかがですか?そして数年ごとに見直したり、必要であれば書き直したりしながら、ある程度の年齢に達した時に、必要であれば公正証書遺言を作成するという流れがいいように思います。
相続は突然起こります。悲しむ遺族の負担を少しでも減らし、そして争いごとに巻き込まれないよう今から準備されてはいかがでしょう。
子のない夫婦の場合、夫だけでなく妻も、お互いに別々の遺言書を相手の為に準備しておくと安心です。