行方不明の相続人
相続が発生し、いざ相続登記をしようとした場合に、相続人の中に行方が分からない者がいるという事があります。
こういった場合、どのような手続きをすればよいのでしょうか。
通常であれば当然相続人になる(配偶者や子)けれど、「相続人にならないようにする」という選択をする事で、相続手続きがスムーズに行えるメリットがあります。
ですので、そもそも相続人として扱わなければならないかどうかを検討する所から始めましょう。
事例
父 H27.4.10死亡
母 H30.2.10死亡
長女 40代
長男 H23.1月から行方不明(当時32才 婚姻歴無)
不動産の名義は、父2分の1 母2分の1であった。(遺言はない)
まずは父の相続、母の相続を分けて検討します。
父の相続
長男はすでに行方不明となっていますが、4年しか経過していません。
よって、父の死亡時に長男は生存しているという扱い(失踪宣告の審判申立が出来ない)になり、相続人となります。
この場合、法定相続分で登記をする事は可能です。
また、不在者の財産管理人選任審判申立をして、不在者の財産管理人と遺産分割協議を行う事も可能です。
母の相続
長男は行方不明のままですが、すでに7年が経過しています。
よって、母の死亡時に長男は死亡しているという扱い(失踪宣告の審判申立が出来る)にする事が可能となり、失踪宣告の審判が確定した場合、相続人となりません。
母の相続人は長女のみとなり(長男に子がいない場合)遺産分割協議を行う必要もなく、預貯金の解約等の手続きも長女が唯一の相続人という事でスムーズに行えます。
なお、長男に子がいた場合は、長男の子が代襲相続人となります。
申立をするかどうかは任意です。
よって、失踪宣告の審判申立をしない限り、行方不明から何年経過していても長男は相続人となります。
この場合、法定相続分で登記をする事は可能です。
違いはどこか
「行方不明になった者の生死が7年間不明である事」を満たさないと、失踪宣告の審判申立は出来ません。(普通失踪)
7年経過しているかどうかがポイントとなります。
例えば、H30.4月に申立をして、H30.11月に失踪宣告の審判が確定したとしても、長男が死亡したとみなされるのは、行方不明時から7年の期間満了の時です。
よって、H30.1月に死亡したとみなされます。
今回の事例ですと、母が2/10に死亡しているので、母の相続人にならない事になります。
行方不明になったのが、H23.2月だった場合、日付が明確でないと、母の相続に関して、相続人になるのかどうか判断できません。
権利関係を確定する為に重要ですので、申立を行う際、可能な限り日付を書いた方が良さそうです。